坂道ー裸トカゲ
あおば

                

国道の景色はどこも同じ

見通しの悪い道をくねって行くと
小さなお宮の前の辻に出た

車のタイヤが2本立っている

  ごく普通のもので/新品ではないが/さほどすり減っていない
  誰かが仕舞い忘れたのだろうが/迷惑な話である

ぎりぎり左に幅寄せしたが
通れない
ホーンをならそうと考えた
お宮の前では剣呑だ
諦めて
降りて片づけようとした途端
タイヤは静かに転がりだした
坂道の右端を歩くように
ゆっくりと登って行く
下りではないのだから
おかしなことだと思いながら
少し距離を置いてついて行く

どんどん
どんどんと登り
少しも息を切らすこともなく
とうとう坂の頂上に着いた
そこからは急に眺望が開け
ゆるやかに下っている
良い眺めだが、これからどうなるのだろう
道は相変わらず狭く
気を抜くことも出来ず
視線をぐっと手前に戻し
車幅に余裕を配っていた
ので
気が付くといつの間にかタイヤは消えている
フルスピードで逃げたのだ
誰もいない坂道の上空は眩しいくらいに明るくて
今日も高曇りの春が拡がっている

遠くで揚げ雲雀の声がする

腹が空いたなぁ
殺した女に群がる男達の姿が傷口を化膿させるのだ

抗生物質の丸薬を渡してくれた偽医者の笑顔を
思いだしながら
琵琶湖の底から大ナマズを釣り上げて
淡泊な肉は食べ過ぎても
太ることはないと
過信している人たちに売りつける

美人肝腎黒ウサギの肝を潰す石臼

無駄ギツネを叩きつぶした夢死饅頭

仏領インドシナの大ナマズの肉と高粱
叩きつぶした高粱
こら、こうりゃん
お帰りなさいませのお宮の松で首を吊る借金返済の道
なので
かまととぶって/酷道って国道のことと言うような人は/タイヤの中に住むハマダラカに刺されて病気になる裸トカゲ

似ている
と思う坂道は裸なので日焼けしたのです






過去作 2003.01.11


自由詩 坂道ー裸トカゲ Copyright あおば 2006-07-13 19:08:43
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