紺天のさやぎ
いわぼっけ

染めあがったばかりの紺幕の空に
乏しい星々の煌きを
捕らえることのできない俺の眼は
薄汚れた都会の空を呪いだす

ペテルギウスやシリウスの
絶叫のようなプロパガンダを
誰も聞こうとしていない
咎める者さえいない

子午線の闇は天球の律呂を孕む
この暗さは何なのでしょうか
この寒さは何なのでしょうか
あなたはお解かりでしょうか

氷の花束手渡され
クロム鍍金の別れのキッスが棘を生む
おおいぬシリウスの牙は彷徨うおとこを追い立て
毒牙をなくした蛇は鎖に変わる

さそりのアンタレスが赤い目で睨みつけているのは
地に堕ちた蛇使いの笛だ
百年の過日に拾う者はいない
理想の旗は落日に変わる

真実はなべてこのようなものだと
オルグのつぶやきが白々しいが
俺は寡黙な首肯を繰り返しながら
暗いあなぐらに還って睡る


自由詩 紺天のさやぎ Copyright いわぼっけ 2003-07-27 19:42:33
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