*なぐさめ屋ジョニィ*
知風

14歳のマァギー・マァリィが時計塔から見下ろしたのは
この腐った街の赤レンガ通り
こびりついたチューインガムみたいな
ホームレスたちだけが その上で輝いていたのさ

奴らは何も持たずに生きられるから
いつまでもきれいなんだって
ほおずき亭の デブのママが言ってたっけ
マリファナの煙を 鼻から噴きながら

擦り切れたジュディ・ガーランドのレコードを
大事そうに抱えてやって来たのは昨日の話
きっと彼女も 明日からは娼婦なんだけど
その赤い革靴の光はもう やけに悟った風だった

オンボロパトカーを見たらあいつ
ジョニィはユダヤ人のクレイジーシェリフ
はちきれそう そのエドウィン

ローズヴァイン・ストリートをぶっ飛ばす
その跡には部品がこぼれ落ちてるぜ

役人とか嫌いだからさ
ジョニィのバッヂは緑色のヒイラギの葉
トンガッテルゼ その先端は

うそつきレィビーが
洗礼者を殺して以来の
ほんものの救世主様なのさ

ジョニィは麻薬商人をぶん殴り その後でキスをする
ジョニィは週に一度娼婦を買う うやうやしく膝をついて
ジョニィは時計塔から金をばら撒く それが彼の国の国家予算
ジョニィは子供を集めて手品を見せる ジュースもたんとあるよ

だけど冷たい心のマァギー・マァリィは
ジョニィの嘘に 気がついてたのさ 

「この街は最高だぜ お前達も最高だぜ」

ジョニィが撃たれる朝 みんなはその言葉を思い出すだろう
マァギー・マァリィは 生まれて初めて涙を流すだろう
オンボロパトカーのアクセルを 全力で踏みながら


自由詩 *なぐさめ屋ジョニィ* Copyright 知風 2006-07-11 09:20:20
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