情報通の友人から
感情の食べ方を教わったので
早速今ある幸せをかき集め
ジックリコトコト煮込んでみたところ
これが何とも薄っぺらい味であった

アイスのフタを舐めているような
惨めったらしい気分になって
愚痴をこぼそうにも一人
仕方なく ブログに書き連ねてみたら
「医者に行け」とのコメントを頂いた

人からの提案はしっかり受けとめなさい
そう小さいときから教育されてきたので
近所の総合病院まで出向く
「幸せをうまく味わえないんです」と訴えたら
「私もです」と受付の女の人は笑った

優しげな初老の医師は
「大変深刻な症状ですなぁ」と
案外大真面目な顔で言う
「役者でもめざしてたんですか？」と聞いてみたら
薬包をたくさん渡されて追い出された

家に帰って確かめてみると
包の中には幸せな歌が詰まっており
「繰り返し聞くことで効果が出ます」と書いてある
少し期待しながら注意書きまで読むと
「愛、夢アレルギーの方の服用禁止」とあった

いつの間にか日が暮れてしまい
空腹がどうしようもなく襲ってくるので
そこらじゅうにある悲しみを適当に選んで
生焼けのまま口に運んでみたところ
舌が焼けるような濃厚さで

そのまま皮肉に包まれて
明日のために 泣きながら眠った