living corpse
宙空 心

どうして君はそんなに
繰り返す
「これでいい」と

そんなこと言うなよ
諦めみたいな
それでも君は
繰り返して
僕を狂わすんだ

だから僕は…



遠く儚いものに
縋り付く癖
伸ばした手は当然
意味のない棒になる
そんなことにさえも
僕は涙を流せない


彼女は僕に言った
「心は何処に行ったの」と
そう
僕は彼女に言ったんだ
笑顔で
「もとからないよ?」と
案の定
君は泣いたね


それは昔の
戯れの約束
否、むしろ約束など
交わした覚えもないくらい
「何処かに行く時は
必ず行き先を言う」
そんなこともあったね
もう遠い御伽噺おとぎばなし
守ったことなどないよ



僕らは多くを失くし過ぎた
もうすり減るばかりで
決して埋まることはない
僕は刀
君も刀
端から鞘なし同士
それでは刃毀れするばかり
刄を研ぐ暇もない



先に刃こぼれしたのはどっち?
その答えはすぐわかる
君のやいばひびが入るから


先に死んだのはどっち?
その答えもすぐわかる
まだ肌寒い桜の下で
僕が君を埋めるから



じゃあ

それを見て泣いたのは?






*short cut*

ただ「さよなら」と
言うことができたらよかったのか
そんなくだらないことは
葬儀屋にでも頼んでくれ

僕にできることは
ただ
君が二度と目を覚まさないように
その喉元を
掻っ斬ることだけ


次の年には
美しい桜を見かけるだろう


自由詩 living corpse Copyright 宙空 心 2006-07-08 00:08:46
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