「本音」という言葉があるけど、それは「真実」とは限らない気がする。

例えば、ある人に「それが本音ですか？」と問い続けて言ったら、最終的には「分からない」と答えるだろう。

答えは、いつだって一つではないから。

本音を聞いて、怒る人がいるけど、世界は本音で決まっているわけではないので、本音で怒る必要はない。本音は、脅威にはならない。

本音というのは、ただ「もう一つの言葉と対極にある」だけだ。でも、世界は二つの極端な世界の中間にぼんやりと浮き上がるものなのだ。

あたしは、言葉を世界に投げてみることがある。真夜中に花火を投げるように。

何も考えないで。

そうやって、暗やみの中を手探りで探していく。

何を？

関係性を。未来を。過去を。自分自身を。他者を。言葉を。

そうするといつも肉体の自分と、

言葉を操る自分が柔らかく、分離していく。

いつも同じような光景が見えるので、またあたしは分からなくなるのだ。