カーテンの向こう
ブルース瀬戸内

再加熱された論理の中に
探しているものはありませんでした。

こどもはいつのひか
すぐそこにあるしんじつをみないように
つとめるようになって
ぼやけたみらいにぼやけたしんじつを
さがすようになります。


再加熱された切なさの中に
あなたはもういませんでした。

大人は空前絶後の経験をしたことを
受け入れる度量もないくせに
遠いものを美化して近くをやり過ごします。


再加熱された志の向こうに
私は本当は現在を求めているのかもしれません。

気の利いたカーテンみたいな夕焼けに泣いて
いつもより星がクリアに見える気がして心高ぶって
そんなことにだけ感じられる現在を

何か他のものに求めているのかもしれません。


カーテンが消える頃にあなたと待ち合わせして

時々、すべてを透徹した言葉を放つあなたの向こうにある星が
なんだか輪郭まで見せてくれそうで

そんなことも
再加熱した切なさにはもうなくて
それを志に転化して、いや昇華して
向こうに放とうとしているのかもしれません。


こどもがみたしんじつは
ほんとうはむいしきかにもぐって
大人はそれをもう一度見たいから
ああでもこうでもないと
昨日から明日へ模索しています。


再加熱された論理の中に
探しているものはありませんでした。


ぼやけた現在をクリアにするために
じきに現在になる明日に
志を放って、だからその向こうに
夕焼けよりももっと向こうに
現在があるのかもしれません。


カーテンに気の利いたグラデーションがかかっているのは
論理の外側が透けているからかもしれません。


自由詩 カーテンの向こう Copyright ブルース瀬戸内 2006-07-05 01:02:10
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