起源の果実 / 天球の揺りかご
水無瀬 咲耶

夏草ゆれる丘にくると 
まばゆい光にうたれる
この不思議な空虚は何だろう・・・

宇宙は今も膨らみ 
大地にも満ち広がる生命
かつて一つの受精卵だった私 
意思の感知しえない領域・・・
それぞれの末端が笑いさざめき 
星の誕生と消滅を繰り返す
根源から絶えず突き放され 
流転してゆくこのカラダ
途方もない淋しさが 
人を狂おしくさせる 
存在とは何かつかみきれず 
心は鈍く 昨日の影法師を踏む

けれど 全てを貫く法則もある
宇宙の精神 根源への復元力
あらゆるものたちは欠けた痛みから
小さな雛形を懸命に作ろうとしている

私の無は 宇宙だ 
青く潤む空を仰ぎ 
まどろみながら
甘い磁力を放つよ
あらがえないチカラ 
星たちが小さな手をつなぎ
刻々と集まる銀河の渦 
天球の揺りかごのなか 
恍惚として現れる 
新しい言霊の息吹き・・・

水平線は 遥かに 遠く 
潮は私を満たして膨らんでゆく
あの静寂なひと時は 
この胸に刻まれた楽園のカケラに
エデンの果実がひとつ 
実ってゆく気配だったのかもしれない


自由詩 起源の果実 / 天球の揺りかご Copyright 水無瀬 咲耶 2006-07-04 13:13:11
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