僧と蛾
奥津 強

異形である
僧が 泣くのである
静かに
念仏鈴の 音が
僧の 頭に かぶさるのである
ちぃん ちぃん
音が 響くのである

僧の 頬には 
蛾が 張り付いておる
蛾は 手足がない
だが
毒は ゆたう 人々のために
あるので
僧は 蛾を はらわん!

何故か 夜道の 途中で
号泣する 子の 手を 捕まえては
蛾と 共に
僧は 道を 行く

念仏鈴の 音だけが
泣き声と 共に 混じっては
遠く 靄の 私には
寂しげに 感じられた


自由詩 僧と蛾 Copyright 奥津 強 2006-07-04 00:13:47
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