湖心へ
杉菜 晃
暮れなづむ山の湖を
一羽の白鳥が滑つていく
湖心へとーー
周囲と断絶したわけでもないのに
他の鳥たちに追はれたわけでもないのに
白鳥は湖心へと静かに滑つていく
湖岸は葦の影に黒々として
中心へ向かふ鳥の
ほの白さが目につく
この寂しい湖の日暮れどきを
湖心へと離れる
白鳥の求心力には
一体何が働いてゐるのだらう
自由詩
湖心へ
Copyright
杉菜 晃
2006-07-03 15:47:21
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