【短歌祭参加作品】あしたも夏でありますように
本木はじめ



かつていた冷凍都市を思い出すような小説書いている初夏


再放送されてる温泉番組を観ているぼくを見ているかか氏


転校生だったあの子は元気かなどおんどおんと胸打つ花火


海岸で貝の欠片をひろうひと二度と消えない足あと胸に


絶好の秘密基地だとはしゃぐ子ら蚊取り線香工場跡地


美はそして短いほどに愛おしい流星群の群も孤独で


お中元届けるべきかこの青い海へと飛び込むべきか八月


どれだけの宿題ぼくは溜め込んできたのか未だにわからない夏


すくわれず川へと流す赤い花、金魚すくいのおじさんと犬


扇風機廃品置き場に捨てられて風化してゆく八月の午後


水のないプールの底に寝転んだ僕の瞳を覗き込む空


田んぼからはみだしている左あし遠いどこかに夕立の降る


彫刻家死して真夏の青年と永久に呼ばるる半裸の彫像


売れ残る無数のすいか店頭でどんな詩よりもより詩を秘めて


大雨の墓地で郵便配達夫むぎわら帽子を乾かしている


サマードレス闇のむこうへ脱ぎ捨てて蚊帳の中へと入る裸で


青よりも少年少女は水色の海を求めて難破する夏


「エンドれすサマーもおわり」だってほら、線香花火のような太陽


軒下へ無数の風鈴ぶら下げてあしたも夏でありますように






短歌 【短歌祭参加作品】あしたも夏でありますように Copyright 本木はじめ 2006-07-03 15:39:56
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