脱皮

朝が死んだ と
夕飯時に連絡があった

その時の晩御飯はカレーだった

私は一晩じっくり寝かしたカレーが
好きだったので
とてもショックを受けてしまって
あぁそう
    としか言えなかった

電話をくれた友達は
とても騒いでいた
電波の調子が悪いのか
楽しそうに笑う声が聴こえた



電話を切った後
私はお母さんに
あのね 朝が死んだんだって
と伝えると


お母さんは
あら 大変ね と言いながら
カレーにソースをかけた

私はかけるなら醤油でしょ と
心の中で突っ込みながら
自分の椅子に戻った


お母さんは
誰も死んでいないこの家で
仏壇にお線香をあげている

遺骨は?
と聞くと
骨はないわ 皮だけよ 
と言ったので じゃぁ皮は?
と聞くと

いつも虫が食べてしまうから
無いわね と言った


そう と私は応えて
歯を磨きにいった
そういえば友達は出掛けたらしい
歯は磨いたのだろうか


歯磨き粉は苦い
でも虫歯はもっと嫌だ


自由詩 脱皮 Copyright  2006-07-02 23:45:15
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