脱皮
K
朝が死んだ と
夕飯時に連絡があった
その時の晩御飯はカレーだった
私は一晩じっくり寝かしたカレーが
好きだったので
とてもショックを受けてしまって
あぁそう
としか言えなかった
電話をくれた友達は
とても騒いでいた
電波の調子が悪いのか
楽しそうに笑う声が聴こえた
電話を切った後
私はお母さんに
あのね 朝が死んだんだって
と伝えると
お母さんは
あら 大変ね と言いながら
カレーにソースをかけた
私はかけるなら醤油でしょ と
心の中で突っ込みながら
自分の椅子に戻った
お母さんは
誰も死んでいないこの家で
仏壇にお線香をあげている
遺骨は?
と聞くと
骨はないわ 皮だけよ
と言ったので じゃぁ皮は?
と聞くと
いつも虫が食べてしまうから
無いわね と言った
そう と私は応えて
歯を磨きにいった
そういえば友達は出掛けたらしい
歯は磨いたのだろうか
歯磨き粉は苦い
でも虫歯はもっと嫌だ