夕焼けのチケットさん
AB(なかほど)

  

大学時代のテキストの隙間から
色の褪せたチケットが
半券も切られないまま何年もそこに
「ところでそのコンサート」
と相方がつぶやく
そう
このコンサートはとてもよかったらしいね
解散間際で
それぞれの気持ちが
歌声やギターの音に響いていて
あれから
流行の再結成の噂もなく
そりゃ 
もう一度生で聞きたいってとこだけれど
流されずにそれぞれの道を歩いている
って
そういうところがまた嬉しかったり
ほんとによかったらしいね
「ねえ」
うん
そうだね
こんなことを聞きたいんじゃないってことは
さっきからわかってるよ
いったい
誰と行けなかったんだろうね
どこに行けなかったんだろうね
どうして行けなかったんだろうね
もう行けないんだろうね
もう
あの日の僕は
忘れていいかい
夕焼けのチケットさん
すっかり
色も褪せてしまったのだから




自由詩 夕焼けのチケットさん Copyright AB(なかほど) 2004-02-26 03:00:21
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夕焼けが足りない