溶けかけのアイスクリーム
松本 卓也

気が付けばいつも
人の輪から外れて
天井の繋ぎ目に向けて
煙を吹きかけている

そういう姿を晒していると
大抵誰かが僕が思う事と
逆側の意図を感じるのだから

存在が掻き消えている間に
金だけ置いて立ち去った
声をかけられたときの言い訳を
頭の中に巡らせながら

バスが見計らったかのように
信号で停車していたのは
僕にとって幸運であるけれど

家に帰り着くまでの30分
ポケットからは一度たりとも
振動を感じないのは
当然の事だと納得している

そうやって孤高のフリをしても
空気の読めない変人として
記憶に刻まれているだけだから

結局明日になれば誰しもが忘れ
僕は適当な言い訳を呟いて
何も残らない事に気付くたびに
心だけで泣いているのだろう

煙草を補充するついでに買った
溶けかけのアイスクリームの
半端なぬるさが表しているのは

今日も僕が愚かだった事も
明日も僕の心は開かれない事も
結局は弱さの代償から導かれた
自業自得に過ぎないことを示していた


自由詩 溶けかけのアイスクリーム Copyright 松本 卓也 2006-06-30 00:39:25
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