水在らあらあ


ほら
こんな朝だよ
おまえはまだ寝ているこの朝を
俺は吸っているよ
この朝を

ウミスズメが
隣で
少し悲しげだよ
でもそんなことは
おまえは知らなくていい

ひらめがあわてて逃げた砂を
俺は飲んでは吐いているよ
そうすることによって
おまえの明け方の夢に
何らかのきっかけを
与えられるように

落ちて
水の中を引きずられて
俺は聞くよ
静かな
海の意志を
そうしてそのほんの少しでも
俺の体に宿ればいい
そうすれば俺の体から
静かに
おまえの中に
伝えられるから

なあ
どうして空は
こうもいいのかなあ
今朝は特に
何もさえぎらない

ずっと連なって
沖に出てゆく
カモメたちの
その背中に
勇敢なネズミ達が
いちいち
乗ってたっておかしくはない

ほら

振っとこう一応
おーい

がんばれよー

……

ふふふふ

ひひひ

あはは


そうか

そうだった

いま

思い出した

これは

全部

おまえのだ

この空も 

水も ウミスズメも ひらめも

砂も カモメも ネズミたちも

朝に焼け きらきらしたこの景色も

そこに浮かんで笑っている俺も



(こんなにせわしなく呼吸する
 元気にあふれた命も
 それをおかしくありがたく思う
 この心も)



なあ、
もう、いいよなあ、

水の上で、
俺はただラアラア歌うばかりだ

こうやって海と遊び 陸に上がれば
おまえが優しい目をして待っている

水の上で、
俺はただラアラア歌っていればいい






自由詩Copyright 水在らあらあ 2006-06-29 18:01:32
notebook Home 戻る