同じ月を見ている
大覚アキラ

昨日の帰り道に
なにげなく空を見上げたら
コンパスで丁寧に描いたような
丸くきれいな月が浮かんでいたので
ふいにあの人が教えてくれた
あの歌を思い出しました

ここは木屋町でも丸太町でもなく
ましてや新宿の南口でもありませんが
私を照らしている白く丸い光は
あの歌の月と同じやさしさで
私を静かに包んでいます

明日はあの人に逢えるでしょうか
あの人を重く沈ませた悲しみのような感情は
明日には少しは軽くなっているのでしょうか

私にできることなど
たぶん何もないのですが
私はここから
あの人の今夜のやさしい眠りと
明日のささやかなしあわせを願っていて

そしてきっと
私とあの人は今
同じ月を見ている


自由詩 同じ月を見ている Copyright 大覚アキラ 2006-06-29 12:37:06
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