いかだをつくる勇気もない青少年Mのぼんやりとした主張
土田


すべてではないよと
誰かにささやかれたきがして
国道沿いをまっすぐに
とりあえず題名から逃げてみた


意味を知っているなら
むりに走る必要なんてないと
となりの詩人がおびえている


究極とかそういう言葉を
すごく口走りたいけど
まだぼくは走っちゃいけない
なぜなら地球は丸くなんてないと思っているから
……


嘘って言ってよ
おかあさん


犬が飢えている
あんなにもつぶらな瞳で
食べてもいいよ
だってたくさんいすぎるもの
そのかわり
つぶらな瞳ままで
食べてください
だってぼくらは弱いもの


書くことを
間延びに間延ばせて
うんこみたいに
我慢しないことさ
だからドストエフスキーなんてうんこだ


家が燃えている
手が見える
あいつら火星人なんだ
もっと火をくべろ
天を仰ぎながら爛れた手
やっつ


とおい向こうの駅で
ひとが轢かれた
かんぱねるら
残念ながら
ぼくは君が大嫌いで
そして憎いほどアイシテイル


戦争とか平和とか
ぶっちゃけどうでもいいよ
殺人はなくならないわけだし
親近相姦でうまれてくる児もいるわけだし
鳩は撒き餌に寄ってくるわけだし
雲雀はまだ見たことがないわけし
だってぼくはまだ生きているわけだし

10
朔太郎のまねごとばかりで
うんざりしていたんだ
でもとってもこわいよ
うしろめたさと
ないものをあると信じていたんだから

11
数え間違えて
何も浮かばなかったてのはなし?

12
仮想世界では
ぶたがひとになれる
でもぶたになれたひとをぼくはひとりも知らない
つまりは氾濫と反乱のいたちごっこだってこと

13
知らないままのほうがいい
花に名前をつけたときから
たぶんきっとあやふやに世界は終わりを迎えたんだ

14
ある日
埋めたはずの骨壷のなかから
父の首、ねりょりと
母のちぶさ、びゅるりと
いつかぼくたちもそうなりたいねって
きのう四回のせっくすのまえ
きみを縊ったときのせりふ
「誕生日おめでとう」

15
あっ、にわとりが鳴いた
ぶらじるでは女がはだかで躍っているというのに
なんて世界は平和なんだろう
テポドンはやく落ちてこないかな

16
世界の車窓から
おしっこをした
ブラウン管を買い換えるのは
じつはこれが五度目

17
原稿用紙じゅうまいとか余裕で書けるひとにはなりたくない
たとえば一行にじゅうねん費やすような
あたかも悟ったようなばかになりたい

18
喩をわかしたいのだけれども
肝心の比を熾すことができなくて

19
哲学ってなあに?
仏教徒だろ
輪廻しよう
煩悩って百八つもあるって知ってたか
阿修羅の如く
ローマの神さまも所詮
恋はする

20
どうでもいいことを
どうでもいいように
どうでもよくすることが
にんげんの務めでしょう

21
ばかやろう
この寮
声が筒抜けじゃないか

22
めぐすりをひゃっこ買って
でくのぼうを冠した
みすぼらしい格好で
いつか旅をしようとおもう
東に病気の子供がいたら
ひゃくえんマックでソフトクリームを奢ってやり
そのまま風景に溶け込んでしまいたいぐらいに
なみだをながそう
そのくらいのことしかぼくにはできない自信がある

23
未曾有の明日は
今日になれば
どうってことない一日で
昨日はあんなに気持ちよかったのに
はいていたパンツの色さえ
もう思い出せない

24
風が吹きましたので
精神科に見えない足を向かわせます

25
嘘と真実
でもあなたのまえでは
できるならぼくはいつも中庸でありたい

26
この道路標識があるおかげで
風は歌舞伎町のまたぐらに依存している
花をさがしている少女が一匹
自分の影におびえているのは良いことだ
どうか造花を売るひとに唆されませんように

27
ジョージーの肉片について話がしたかったんだけど
このお話しはまた今度

28
ひゃくえんのいんすたんとこひーを飲みすぎて
ねむれないのは誰にもないしょ
すごくまずかったのはもっともっとないしょ

29
終わろうと思えば終われた
なんであなたはそこで終わったんだろう
そこがあなたとぼくのちがいかもしれません

30
あの、ぼく
ぜんぜんおよげないんですけど
ふねっていくらぐらいですか
じゃあ
あとでまたよります


自由詩 いかだをつくる勇気もない青少年Mのぼんやりとした主張 Copyright 土田 2006-06-29 05:13:12
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