隣
民
旅人は唄をくださいと言った
それならばと
僕は悲しみの唄を
突き刺してやった
旅人はよろこび通り過ぎて
行った
また新しい旅人が来て
唄をくださいと
言った
それならばと
僕は悲しみの唄を
突き刺してやった
旅人は強い目で僕を見つめた
懐かしいのは気のせいだろうか
旅人は少し血を流した
そしてその傷をかくそうとした
見逃さなかった
見逃せなかった
僕は薬をそっと差し出した
旅人の手は温かかった
苦しいのは気のせいだろうか
でも生まれてくるのは
悲しみの唄で
その次も
その次も
その次も
その次も
生まれてくるのは悲しみの唄で苦しいのは気のせいだろうか