旅人は唄をくださいと言った
それならばと
僕は悲しみの唄を
突き刺してやった
旅人はよろこび通り過ぎて
行った

また新しい旅人が来て
唄をくださいと
言った
それならばと
僕は悲しみの唄を
突き刺してやった
旅人は強い目で僕を見つめた

懐かしいのは気のせいだろうか

旅人は少し血を流した
そしてその傷をかくそうとした
見逃さなかった
見逃せなかった
僕は薬をそっと差し出した
旅人の手は温かかった

苦しいのは気のせいだろうか

でも生まれてくるのは
悲しみの唄で
その次も
その次も
その次も
その次も


生まれてくるのは悲しみの唄で苦しいのは気のせいだろうか






自由詩Copyright  2006-06-27 22:13:54
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