天花(てんげ)
木立 悟


堕ちた孔雀が集まる場所で
ただひとりかがやくものは傷を得たもの
白く織られた光の羽の
かすかなほころびから見える花
光や音の波の向こうに
見えること 見えないことの向こうに在る花


雨が地を押し戻す
それでも地は昇ろうとする
永い永いはざまがあり
いつか雨が降り止んだとき
願いも想いもひとつになり
天の花が咲くのを見ている


こぼれ落ちた花々を
白く乾いた花々を
やわらかく踏みしき
たちどまる素足
原と川とが交わった日に
花をまとい生まれた子
水のようにめざめた子


天の花  陽の花
光のよろこびに身をよじる花
月の花  地の花
手のひらの水に映る花
静かに凛と伸ばされた
淡くかがやく夜の喉に
ゆっくりと傾き 飲み干される花
夜の肌のすぐ下で
小さな羽のように火照る花


天の花 手のひら
無垢の花 ひとひら
羽の花がふりそそぐ
互いに重なりふりそそぐ
ひろげた腕にふりそそぐ
見えない器にふりそそぐ





自由詩 天花(てんげ) Copyright 木立 悟 2004-02-24 06:48:37
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