アーカイヴド・私
umineko

佐々木好(ささきこのみ)って、知ってますか?北海道出身のシンガーソングライター。急に思い出して、ネットで検索してみたよ。

するとね、ちらほらヒットはするんだけどさ。でもたとえば楽天などでも、タイトルは出てくるんだけど、アルバムは扱っていなかったり。インディーズじゃなくて、きちんとしたレーベルだったと思うけど。へーって思う。

誰かがコメントで、「マイナーな女性歌手」って書いてて、少し笑った。そうだよね。マイナーな女性歌手。メジャーデビューを果たした才能あるアーチストでも、そうなんだ。私たちなんて、どうだろう。「マイナーな書店員」。「マイナーな経理課」。いやもう、明らかにそれ以下か。所詮はそんなもの。

詩作品を、こうしてネットに書き散らして、しばらくが経つ。好きな作品もあるし、いとおしい作品もたくさんある。でもたぶん、それだけ。誰かの記憶に残るかもしれない。しばらくは。でも、5年後、10年後はどうだろう。私の名前も存在も。ここにはいない。

おそらく。私の記憶は残らないのだ。誰の胸にも。「死んでも覚えていて いいですか」ってあなたは言った。いいですかって、とんでもない。こっちが頭を下げて頼みたいくらいだ。でも私たちは知っている。それはかりそめでしかないことを。

私は消えていき、あなたは忘れていく。それがいったいなんだというのだ。街は消え、星が消える。それだけのこと。

それでも。いつかだれかが、ふと。膨大な検索の片隅に流れた、私のことばを知るかもしれない。もうそれでいいんじゃないか。ゼロ年代を象徴するような、壮大な流れの中に私はあるのかもしれないし、全然、違うかもしれない。どうでもいいわけじゃない。私は、もがく。私は、たたかう。絶望もあきらめもしない。信じるなんて、なおさら。

私の胸のアーカイブに、いくつかのフレーズがある。冒頭の、佐々木好だって、そう。

あなたの湖の。そばで揺れる一枚の木の葉になりたい。
そんな風に思うだけ。






自由詩 アーカイヴド・私 Copyright umineko 2006-06-25 03:00:58
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