林檎と無神論者
士狼(銀)

《お気に入り》
っていうのは、
一体どういう位置関係なのだろうか」と
一昨日の三限目から
ずぅっと、
悩んでいます

曖昧さが愛しくて
不完全さが憂鬱で
もどかしさは
白鷺の歩みのよう。

《お気に入り》
っていうのは、
何だかとっても、宙ぶらりんだねぇ」と
らいおんパペットは
おんなじ顔で、
悩んでいます

機械染みているよ、全く」
冷蔵庫内果物室、の林檎が
そう言って露骨にエチレンためいきを吐き出すので
キリスト寄り無神論者、の左手で
そっと摑んで齧ってやりました

《お気に入り》
っていうのは、
甘酸っぱい林檎みたいなものかしら」と
まるで斜陽のように
ぽつりと、
置いてみたのです
黒猫の悲哀にも似た
楚々とした苦味を添えて





『斜陽』太宰治
「不良とは、優しさの事ではないかしら。






自由詩 林檎と無神論者 Copyright 士狼(銀) 2006-06-24 19:04:13
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
complex≒indication
獣化