ジョニーの夏休み
しゃしゃり

ジョニーの本名は青木イサオだが
もちろんゴルファーではなかった
革ジャンは合皮だが
アメ横で買ったわけでもなかった
初めての給料で輸入雑貨屋へいき
ブリキの看板を買ってきた
SUMMER VACATION
それをアパートの駐車場に飾った
だが人の駐車場なのですぐに撤去された

ジョニーがなぜジョニーと呼ばれるか
夏はなぜまた来るのか
なぜまた恋におちるのか
痛い目にあうだけだぜジョニー
理由はないのだ
夏に理由はない
生きるのに理由はない
自由に理由はない

ジョニーはアメリカのハンバーガーを売りたかった
ぶあつくてまずいやつだ
夏草の輝きだ
ローラースケートで売りたかった
ケチャップのかけあいをやりたかった
夜の窓から仲間の車がやってきて
ドライブスルーのマイクから今夜の計画をきく
だれがだれに振られたかで笑いあう
だがジョニーはマクドナルドをクビになっただけ
ジョニーのスマイルは売り物じゃねえ

ジョニーは港へ行った
霧が出て朝だったから
俺も一緒に行った
煙草も切れて暇だったから
ふたりで貨物船をながめた
クビになったのは
アルバイトの女の子にストーカーとして
店長に訴えられたのが理由だったらしい
密航しないかとジョニーは言った
だが大阪行きだったし
お金はあるよと俺は言った
そうかとジョニーは笑った

ジョニーはそのまま大阪へ行った
俺の金で行った
俺の仕事は朝が早かった
もうすぐ主任になれるはずだった
それからしばらくして
なぜか
SUMMER VACATION
の看板が送られてきた
いつのまに大阪から戻ってきたのか
引越しの邪魔だったらしい










自由詩 ジョニーの夏休み Copyright しゃしゃり 2006-06-24 10:31:20
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