奏失
霜天
そこから音が消えてしまうと
彼は言葉で演奏を始めた
語るべき言葉を失う日のことを
ただ、朗々と奏で続ける
少しずつ無理な景色が増えていくと
喪失の夕暮れに出会ってしまう
燃える朝が安く見える
深い赤に初めて触れた
奏でるべき言葉を知らない
私は彼を真似るしかない
失われていくようでもあり、輪郭になれた気もする
忘れられた約束に触れる
静かに続く演奏はやがて止まり
奏失の、次の朝に組み込まれていく
自由詩
奏失
Copyright
霜天
2006-06-23 01:15:23
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