回転扉
仲本いすら

僕は、あの回転扉ってもんがどうにも恐ろしくて
どうしても、ヤツがいるビルなどには近寄れないのだ。

まるで悪魔。
まるで魔物。
まるで化け物。

いや、さすがに言いすぎなのかもしれないが、どうしても恐怖を覚えてしまう。
(特に、なにかの障害を持っているわけでもなく、あくまで表現として)

一度入ったら、どんなタイミングで、どんな速度で、どんな歩き方で外に出たらいいのか
わからなくなるのだ。
六本木なんかに行くと、こんな僕の考えとは裏腹にひょいひょいとドアを攻略していく人たちがたくさんいる。
そんな人たちがうらやましく、そしてまた、恐怖も覚える。


回転扉というのは、人生というものに似ている気がするのだ。

生きているかぎり、ずっと歩き続ける、歌い続ける僕たち。
回り続ける回転扉、そして金具の悲鳴。
出たい時、出たいタイミングでその扉からぱっと出て
それがもし、人生を終えるタイミングだとしたら?

あの半回転ほどの回転で、人生をあきらめ
そして、人生をビヨンドしようとしている

そんな光景だとしたら?

そうだとしたら、六本木ヒルズに通う人たちは全員自殺者と言うことになってしまう。
そんなことになったら大変だ。よって、回転扉=人生というのは、ただの空想となる。
(ハナっからわかりきっていたことだが)

しかし、もしもどこかのファンキーなパラレルワールドの住人や
全身緑色の侵略者などが、その回転扉を「人生」に変えてしまったとき

あなたは回転扉から、出ることができるだろうか?



散文(批評随筆小説等) 回転扉 Copyright 仲本いすら 2006-06-21 20:35:33
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