噛み応えのある
狩心

複雑なことを単純にして、単純なことを複雑にして
丈夫な歯になるように、これでもかって言うぐらい噛む
噛むと旨味が口の中にじわじわと広がってくるから欲望を満たすけど
なんか疲れちゃって、顎が外れたよ昨日

よく見たら顔が歪んでてさ 
左の奥歯でばかり噛んでいたからだと思うんだ、いつもの癖さ
寝る時はいつも右側の頭を下にして寝てた、これも良くないんだ
だから最近は、右の奥歯で噛むようにしてるし
左側の頭を下にして寝たりしてる、何事もバランスが大事だから

本当に疲れた時だけ僕は素直で
口を半開きのまま、両手を広げて大の字で
まっすぐと顔を天に向けて
ぐっすりと眠る事が出来る、知らぬ間に
ぷっくりと太ったお腹がご馳走様を言う

でも最近よく眠る事ができない 
情熱のエネルギーを発散させて疲れると、気持ちよく眠れるけど
やりたくもない事をやらざるを得ない状況で、ストレスを感じたり
何もやりたい事が見つからなくて、ストレスを感じたり
そうやって疲れるのって本当は疲れてなくて
エネルギーが有り余っているから、よく眠る事が出来ない

そう、エネルギーが有り余っているから、鬱病になるのかもしれない
僕は鬱病じゃないけど、なろうと思えば今すぐにでも
鬱病になれるのかもしれない、少しでも隙を見せれば
怠惰の波が押し寄せてくる、心と体の倦怠感がより一層増して、
自己表現しなくては居ても立っても居られなくなる、押し潰される存在
根拠の無い才能を信じている、小さな毛虫

僕は自分が消えて無くなりそうになったら、急いで煎餅を口にくわえる
煎餅をバリボリバリボリ食べると、少しずつ自分が舞い戻ってくる
それでも駄目だったら、面白い言葉を口の中に放り込む
時に、大好きなあの人を口の中に放り込む事もある

僕は自分の顎の力を信じている、放り込まれたものは片っ端から、
歯で噛んで噛んで味を確かめる、腐ってはいないか、毒は入っていないか、
それとも、体が喜ぶほど健康的でとても美味しいのか、愛情が込められているか、
内に取り込んだり、外に吐き出したり、高速道路の往復は絶え間ない

バランスを気にするようにしてから、顎の骨の歪みが少しずつ直ってきた
それに伴って、顔の歪みも直ってきた、鏡の前で笑みが零れた
でも、目の充血と目の下のクマは酷く、なかなか良くならない
思春期を過ぎた頃から、こいつらと同居してる状態だけど、
その内こいつらにも出て行ってもらう、
一つの問題を解決しても、すぐに新しい問題が現れる
気付いた時にはもう、すぐそばにまで来て居て、蛆虫のように湧いて出てくる

最近の僕は昔の僕と違う
歯磨きはいつも欠かさない、15分かけて入念に磨く
歯磨きをしっかりする事によって僕は
怠惰な鬱を追い出し、噛み応えのある人生を送りたいと考えている


自由詩 噛み応えのある Copyright 狩心 2006-06-20 22:07:08
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