言葉を超えた領域に向けて言葉を放ち続けるのだ
大覚アキラ

 サンボマスターの山口隆は、『そのぬくもりに用がある』のMCで、「言葉にならないからギターを弾くわけですよ!」と叫ぶ。この叫びを突きつけられたとき、思わず立ち竦んでしまった。そして、立ち竦んでしまった自分に軽いショックを受けた。

 山口の「言葉にならないからギターを弾く」という叫びの裏側にあるのは、「言葉にならない」=「言葉を超えた」何かの存在であり、それはすなわち、言葉の臨界点に立った者の叫びなのだと思う。それは、決して一般論としての言葉の臨界点ではなく、飽くまでもサンボマスター山口の語彙という意味での、彼自身の言葉の臨界点に過ぎないのかもしれない。

 だが、言葉に限界があるのは事実だし、「言葉を超えた」領域というのは、恐らく存在すると思う。言葉に置換可能な感情や、言葉で表現できるモノゴトよりも、「言葉にならないもの」の方が崇高だとか、重みがあるとか、そんな風には思わない。問題は、どうやってその限界を少しでも切り崩していけるか、1ミリでも深くその限界の先に刺さっていけるか、だろう。言葉によって。

 たぶんそうやって「言葉にならないもの」に挑むことが、詩を書くという行為の、ひとつの本質なんだと思う。


散文(批評随筆小説等) 言葉を超えた領域に向けて言葉を放ち続けるのだ Copyright 大覚アキラ 2006-06-20 15:15:48
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