硝子越し
狩心

硝子越し                                    
太った子供が頬を赤らめて                            
駅のホームを走る                                
                                        
開かない目  そのままで                            
悪ふざけ  転ばせてみる                            
                                        
硝子越しの世界                                 
                                        
開かない目                                   
開けたつもりで目の当たりにする                         
母に飛びつく子の姿                               
                                        
電車が止まり消滅していく                            
硝子に映る自分の姿                               
                                        
昨日と同じ駅で降りて                              
昨日と同じ建物へ向かう                             
                                        
エレベーターが開き                               
開かれる目                                   
なぜここにいるのか分からぬままに                        
エレベーターと共に上昇していく年齢                       
エレベーターの上昇で到達する硝子の溶ける温度                  
                                        
開かない目  そのままで                            
悪ふざけ  液体になる                             
                                        
手放した現実  取り戻す為                           
手放す日常  今日が辞表の時                          


自由詩 硝子越し Copyright 狩心 2006-06-18 03:08:22
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