山内緋呂子

街でついつい男の人を
宝石に
変換する

裾に 白衣ののぞくメガネは
傷のついたオパール石

チャイナ帽 歩きタバコの初老は
家のないラピスラズリ

梯子に登りたそうな ボーダー20代は
エメラルド

紅白幕に押し倒されそうな公務員は
忍耐オニキス

前髪三本垂れ 赤ネクタイ社会派は
頭痛の猫目石

赤ちゃんを抱っこした ニット帽のフリースは
にんじん


たまに宝石じゃない


傍らに
紫のコート オレンジマフラーの奥さんがいて
私は申し訳なくて
パン屋のディスプレイから
枯れ麦を 手渡した


枯れすすきじゃないよ


私の彼は
小さい頃 家族と行った
断崖の石
母が
「外から石を拾ってくると 悪いことが起こるのよ」
と教えてくれたのに
ポケットに入れてしまった石

ハルニレの木にぶつけてみた
落っこちて
煙草の吸い殻と 共にいる

跳ね返ってくればいいのに







自由詩Copyright 山内緋呂子 2004-02-22 22:24:15
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