ぶるー・びぃず
佐野権太

千代紙こうてくれへん?
匂い付きのやつやで。
嗅ぐと、鼻の奥んとこが、ジーンとなんねん。
何や懐かしいこと、思い出せそうで、思いだせへん
あわーい陶酔があんねん。
千代紙には。
何でやろ、綺麗な記憶から順番に消えてしまうんは。

 千代紙の ほのかな香り 懐かしく
 消えゆくものは かくも哀しき



幸せになってやー、ゆーて、四葉のクローバーもろたんよ。
栽培するやっちゃ。
ちっちゃい球根、入っとってなあ。
植えてみたんよ。娘と一緒に。
柔らかーな芽ぇでとったなあ、今朝。
三つしか、葉っぱなかったら
どないしよ。

 庭先に ふたりで植えた 球根の
 とんがり頭に 光の産毛



久しぶりに友達に、おーたんよ。
話したいこと、ぎょーさんあるやんか。ふつう。
せやけど、奴にもぎょーさんあって
何ゆーても、話かわるけどって
どうしたって、僕の話は聞いてくれへん。
飯食って、お茶が運ばれてきて、そしたら
なんや、わかった気ぃしたでぇ。
もって生まれた星ってあんねんなあ。

 ふとみれば あんたの湯のみにゃ 浮いている
 茶柱もろてええ? 集めてんねん



天井の木目とかみてたんよ。
明日のこととか、明後日とか
先のこと、いろいろ考えて眠れんかったんよ。
そしたら娘が
「ねぇパパぁ、インドの人のピクニックは、カレーとナンかなぁ」
なぁんて、ファンタジーなこと、ピヨピヨゆーてくんねん。
なんや、おまえも悶々としてたんやなあ、思って
粉ひき小屋の話して、寝かしたったんよ。

 粉ひき小屋 水車の回る しゃば、しゃば、しゃば
 黄色いベットで 夢みてるるる



仕事おそーなって、夜中に帰ってん。
冷やし中華がごっつ冷やされてて
器の形に持ち上がんねん。
かみさんとかは、もちろん寝とったけど
テーブルの端っこ
ちゃーんと愛情受け取ったでぇ。

 深夜2時 冷えた食事に 舌鼓
 視線の先に 健康ドリンク


自由詩 ぶるー・びぃず Copyright 佐野権太 2006-06-16 11:55:25
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