ぶるー・びぃず
佐野権太
千代紙こうてくれへん?
匂い付きのやつやで。
嗅ぐと、鼻の奥んとこが、ジーンとなんねん。
何や懐かしいこと、思い出せそうで、思いだせへん
あわーい陶酔があんねん。
千代紙には。
何でやろ、綺麗な記憶から順番に消えてしまうんは。
千代紙の ほのかな香り 懐かしく
消えゆくものは かくも哀しき
*
幸せになってやー、ゆーて、四葉のクローバーもろたんよ。
栽培するやっちゃ。
ちっちゃい球根、入っとってなあ。
植えてみたんよ。娘と一緒に。
柔らかーな芽ぇでとったなあ、今朝。
三つしか、葉っぱなかったら
どないしよ。
庭先に ふたりで植えた 球根の
とんがり頭に 光の産毛
*
久しぶりに友達に、おーたんよ。
話したいこと、ぎょーさんあるやんか。ふつう。
せやけど、奴にもぎょーさんあって
何ゆーても、話かわるけどって
どうしたって、僕の話は聞いてくれへん。
飯食って、お茶が運ばれてきて、そしたら
なんや、わかった気ぃしたでぇ。
もって生まれた星ってあんねんなあ。
ふとみれば あんたの湯のみにゃ 浮いている
茶柱もろてええ? 集めてんねん
*
天井の木目とかみてたんよ。
明日のこととか、明後日とか
先のこと、いろいろ考えて眠れんかったんよ。
そしたら娘が
「ねぇパパぁ、インドの人のピクニックは、カレーとナンかなぁ」
なぁんて、ファンタジーなこと、ピヨピヨゆーてくんねん。
なんや、おまえも悶々としてたんやなあ、思って
粉ひき小屋の話して、寝かしたったんよ。
粉ひき小屋 水車の回る しゃば、しゃば、しゃば
黄色いベットで 夢みてるるる
*
仕事おそーなって、夜中に帰ってん。
冷やし中華がごっつ冷やされてて
器の形に持ち上がんねん。
かみさんとかは、もちろん寝とったけど
テーブルの端っこ
ちゃーんと愛情受け取ったでぇ。
深夜2時 冷えた食事に 舌鼓
視線の先に 健康ドリンク