アンダーグラウンド
霜天

東京は深くなっていく
今こうしている間にも
底なしに流れ込んでいく風に乗せて
僕らは深呼吸が出来るようになっている
そんなふうに、少しずつ思い出しながら
東京は深く、なっていく
君は回答をなくした問題集の前で立ち竦んでいる
そんな背中を
どうにか抱き留めてしまいたい、なんて
考えながら


繋がるように見せかけて
すべてはやっぱり、離れていくらしい
時間も見えない場所で、運ばれながら
どんなふうにしても、夢を見ることが出来た
行き止まりばかりの路地裏からも
いつかは脱出していく蝶々は
迷うために作られた街を
どこかで笑って許せるだろうか
すべてはやっぱり、離れていくらしい
次の順番を考えながら
いつもその背中、を抱き留めたいとか思ってしまう、のは
君は目を閉じたまま、何も見せない表情で
窓の隙間から零れていきそうになる、から
離れていける、その日のために
深呼吸の練習を
いつも、繰り返してしまう



エレベーターの階数表示は
今日も追いつけなかった
少し沈んだ東京の
その分高くなった空は
円い輪郭をいつもより主張して
僕らから、忘れられないようにしている



今も、今も一緒だったものが
同じ眠りに暮れていく、なんて誰も言えない
空に手が届くうちに
深くなる声が響く前に
この街の離れていく約束の、その日まで
僕は僕を君と君を、抱き留めていたいといつも
考えて、しまう


自由詩 アンダーグラウンド Copyright 霜天 2006-06-16 01:06:49
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