眼球たちの夏
A道化



数千粒の眼球が弾け
灼熱前の
朝、の
宙を浮上し
愛おしい、を探り始める、
夏の
何処かの


数千粒の
愛おしい、を探ることの
パチパチする明るいソーダ水のような痛み
を、隠して
視神経は羽ばたくから
数千粒は
それぞれ違う数千羽になって


一羽の眼球も
別の一羽の、何処かの眼球も
何処かへ行ってしまいそうで
何処へも行かずただ真上に浮上するだけなのに
見つからない、
夏の何処か、
夏の何処かで、


炸裂が連なりすぎてそっと生まれるように見えている朝
その朝から朝、そしてまた朝から朝、という、
ひろい、ながい、はためきの何処かへ
行ってしまいそうでいて何処へも行かずただ真上に浮上し
隣り合った眼球と灼熱し合う、ようでいて、違う、
それぞれ違う灼熱を隠して
視神経は滲むから


数千羽は
それぞれ違う数千粒に還って


数千粒の
滴下してゆくことの
ポタポタする空きたての瓶のような痛み
を、隠し切れず
視神経までもが泣いたら
一粒の眼球のわたしを、別の一粒の眼球のあなた
嗚呼どうぞ、愛おしくして


2006.6.14.


自由詩 眼球たちの夏 Copyright A道化 2006-06-14 18:38:59
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