祖国
霜天

いつも眠ることばかりを考えていました
枕の硬さが場所についてを語っているので
少しばかり、指先を開くようにして
眠る場所のことばかりを想っていました

安息は帰りましたか
こちらでは同じことが顔を背けて
冬の後には冬が続くので

電車に揺られれば、窓の明かりが気になります
伸び続ける人の声は平らな青空に阻まれて
それでも届きたいと願うのでしょうか

いつか
紐解かれるように離れていっても
繋いでいたいと思いますか
組み込まれた積み木の城に
抜き取られる幸せは
誰も忘れられない、こと
そう信じていた頃は
もう西日の裏側ですか



木陰に光の揺れる日を、寄り掛かる呼吸を添えるように
思い出して



初恋の脈拍が静かに通り過ぎます
あの角を曲がれば、またカーブばかりなので
それでもと、正面から何かを掴みたくなるので
円い夕暮れをいつも繰り返しているのです
雨の休日に、約束に少し目を閉じて
安息は帰ります
過ぎていく一日や、いちにちは
もうどこにも積み残しはありませんが
それでも吐き出した命のようなものが
確かに沈んでいくので

眠る日のことを考えるのです
幼く駆けていく言葉はどこへ去って行きましたか



空を突き抜けろ、と思うばかりです
笑いながら泣けるのが人、ならば
ここには人ではないものがたくさんの息をしている



騒がしさが駆け抜けていきます
人々の目線は、それを追い越して
ただ、助かれと願うのです
安息は帰りましたか
こちらでは同じことばかりが顔を背けて
静かに戦いが始まっていきます


自由詩 祖国 Copyright 霜天 2006-06-14 00:20:41
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