半透膜
iloha

あなたに会うために
歩いてく道すがら
蹴飛ばした石ころは
転がって
側溝に落ちた
二羽のカラスが飛びだして
山際に沈んだ
見上げると
雨雲が送電線に接触して
発光している
あなたは紅茶を置いて
「危ないよ」
と、やさしく言ってくれた
ぼくは
「そうかも知れない」
と、こたえた
それでもさらに奥まで見てみたい気持ちで
あなたの髪を包む
窓の光に眼をやる
そのさきには
緑のペンキが撒き散らされている
手を伸ばしても
やわらかな半透膜に包まれて
いつのまにか
昨日いたはずの場所に
立っているだけ
あなたは見守っていてくれるだろう
でも
助けてはくれないだろう
ぼくの世界は
ぼくと
ぼくの背負ってる大気がひらく
外にでると
雨はもうやんでいた
かび臭い空気を吸い込み
ぼくは
蒸れたアスファルトの上にただ
浮かんでいる


自由詩 半透膜 Copyright iloha 2006-06-12 00:31:19
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