雨だれ
ku-mi
花の名前を覚えた あの日
愛しい人が指差した
ライラック
陰りゆく歩道
いまにも 雨
コンビニの駐車場
一匹の子犬
しきりにしっぽを振りながら
通り過ぎる人を見上げる
その先の空が
グレイであることはわからなくても
花の香りには
きっと気づいている
私と同じように
鼻の先に 耳に
しずくが落ちた
誰のものでもなく
透明の傘を広げて
ゆがんだグレイを見つめる
ミュールのつま先が
不快に溺れていくのだ
窓からこぼれているピアノの音
上手に拾えたら 子犬
うちへ帰れそうな気がする
首輪の跡が消える前に