傘を差す人 
服部 剛

私とあなたの間には 
いつも一枚の窓があり 
互いは違う顔でありながら 
窓には不思議と似た人の顔が映る 

私とあなたの間には 
いつも一輪の花の幻があり  * 
互いの間にみつめると 
うつむいていたつぼみは微かに開く 

私とあなたの間には 
時に雨が降っており 
互いに向き合う傘の下から 
瞳と瞳は無言の言葉を交し合う 

私とあなたの間には 
時にブラインドが掛かっており 
互いの雨に濡れた一輪の花を
いつの間に忘れてしまう 

私とあなたの間には 
ただ 長い夜があり 
互いの人影が目に浮かぶよう 
ブラインドの隙間から 
光が漏れる夜明けを待っている 




 * 原民喜の詩「碑銘」より引用。 





自由詩 傘を差す人  Copyright 服部 剛 2006-06-09 20:07:21
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