午後の名前
木立 悟




窓と壁のはざまから
水のような顔があふれ
外を見もせず消えてゆく
風が光に 光が風に
裏切りの等価を与えるとき


狭いところ
熱いところ
いたらぬ波をくりかえす舌
輪の上に乗り
野火を馳せる


風が鏡を曲げてゆく
光は落ちて地を嗤う
どこまでも吠える暗がりよ
許せぬものを
どこまでもどこまでも許さぬものよ


銀の物神が矢印に逆らい
無数に分かれる透明な手となり
重なるところ
たなびくところ
ひとつになろうと手まねくところ


忘れられた偉人の道
水を負う光が通り
眠りかけた衣をすべり
行方知れず その名を
手の甲の空に書き加える












自由詩 午後の名前 Copyright 木立 悟 2006-06-09 16:20:14
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