川へ行って死のう
しゃしゃり

女にふられたので、
川へ行って死のうと思った。
留守番電話に就職試験の結果が入っていた。
今日が面接だった。
洗濯物がたまっていたのでコインランドリーに行った。
着ていた服も汚れていたので、
全裸になって、みんな洗うことにした。
百円玉が足りないので、
おもての自動販売機で、
缶コーヒーを買った。
自転車にのって、全裸で川辺まで走った。
途中の公衆電話から、
女に昨夜電話をかけたのだ。
そして捨てられたのだ。
全裸で走っているので、
近所の住宅の主婦が、まもなく警察に通報するだろう。
つかまるまえに川を見たいと思った。
アルバイトのフリーペーパーが流れていった。
切れた釣り糸に鳩の死骸がからまっていた。
野良犬の糞のにおいがした。
学生が何かのロケを対岸でしていた。
水に素足を入れた。
なまぬるいながれが何かのひっかき傷をなぜた。
これで終わりなんだなと思った。
しゃがんで横になった。
川は浅くあまり死ねそうにはなかった。
空がうそのようにうすかった。
俺もうすぎをしてきたな、とぼんやり思った。
いまごろ面接の時間だった。
自己PRをしてください、と言われるはずだった。
もう目を閉じた。
俺は自分をPRするほど分裂してはいない。
コインランドリーはどうなっただろう。
また全裸で帰らなければならないのか。
流れてきたランニングシャツを拾って着てみた。
意外にぴったりだった。
だがそれは腰に巻いた。
学生の映画に俺はうしろのほうで映っているかもしれない。
なんだあいつは、とあとから話題になるかもなあ。
夏は嫌いじゃない。
なんだかいいきぶんだ。






自由詩 川へ行って死のう Copyright しゃしゃり 2006-06-09 10:10:30
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