【物語詩】龍の女帝〜Serve my Lord, Solitary
AKINONA

そなたにかしずくことこそが
我が至上の喜び
麗しき龍の女帝よ 至高の眼の女性(おみな)よ

そなたこそは いと高き玉座に住まう東洋の神秘
その黒曜石にも勝る 美しきぬばたまの髪は 
天輪の如く輝かしい光輝を放ち
世の女ならば誰もが羨み仰ぎ見
ただ憧れずにはいられない
ひたすらに零れる 感嘆と羨望の吐息と共に
そして そなたは艶やかな声
高貴なる退廃を好む その薄い唇に
気紛れに官能を 気紛れに絶望を
そなたは微笑みを浮かべ甘やかに謡う 愉しげに
さらに そなたはその優しい牙
細い弓のような 形のよい眉を寄せて
気紛れに微笑み 気紛れにいたぶる
高邁な崇拝者であろうと 従順な下僕であろうと

そして そなたの住まうこの壮麗な宮処(すまい)は
螺旋の如く下界から聳え立つ
ぬかずかねばならぬ 至上の美の座すその足下に
この世ならぬ美を奉納するために
だが ありふれた美酒など
そなたの前にはただの水に等しいであろう
ならば捧げ持とう かのユダヤの王女も口にした
凍れる血のように紅き美酒を 
ただその赤き唇へ運ぶために
そして ありふれた薔薇もまた
そなたの前には無力であろう
ならば探しに行こう この世の果てまでも
燃える氷のように蒼き薔薇を 
ただその白き指先へ運ぶために

そなたに傅くことこそが
我が至上の喜び
麗しき龍の女帝よ 至高の眼の女性(おみな)よ

そなたが持ちたる龍玉は 我ら余人には過ぎたるもの
それはあたかも夜空の帳の彼方 遙かなる星々
昏き闇を仰ぎ見ぬ者には 目にすることあたわぬ輝き
然り それは我ら常人の愛などという
惰弱な武器では決して陥ちぬ 魔性の砦の中に
溶かすのならば心と引き替えに
燃やすのならば命と引き替えに
だが龍の女帝よ そなたは悉く阻むであろう
薄く気怠い 美しき白亜の如き面差しで
幾千万の兵も歴戦の勇士も 手に入れること叶わぬ秘宝を
その鱗の様に冷たい 細く白い指先で弄びながら
そう そなたは阻みながらも貪婪に求め そして顔を背け続ける
そなたの心を完全に支配する何者かが
この完全なる調和を保つ美しき宮処(すまい)の戸口に立つその日を

そして そなたは常に愛らしい侍童を傍らに侍らせ
時に私をも呼びつける この卑しき語り手を
麗しき龍の女帝よ そなたは知らぬだろうが
そなたが戯れに吹き込んだ創造の息吹が
ただの土塊でしかなかったこの肉体に
大いなる霊感を与えたのだ
だが そなたの眼差しは冷たいと人は言う
そなたの心は氷のようだと人は言う 
それでも私は 絶え間なく生み続けるだろう 
あたかも恋に気が触れた男が漏らす 狂人の呟きのように
泥土(どろつち)から生み出された この愚鈍なる唇の端から
畏れ多くもそなたを彩る事を許された 宝石の如き詩篇を
命尽き果てこの身が乾き 土へと再び還る日がくるまで
この世でただ一人崇拝する我が主のため 永遠に

そなたに傅くことこそが
我が至上の喜び
麗しき龍の女帝よ 至高の眼の女性(おみな)よ



1作目「半妖精の貴人」
http://valedge.ciao.jp/poem/falfelf.htm

2作目「ドリアッド〜Please beloved,Please」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=71010


自由詩 【物語詩】龍の女帝〜Serve my Lord, Solitary Copyright AKINONA 2006-06-07 23:56:33
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