花葬
なるせ

西日があかくにじむ頃
駅前、歩道のわきのほうに
湿ったまだ黒い土がいくつも盛られていて

ぼくはそれを


何かの墓だろう




かがみ込んで
手近なところに生えていた
名も知らぬ花を

ひとつ

千切り

供えた





立ち上がってふと目にしたのは
スコップ片手の、子ども


─これ、きみが埋めたの


左手の単調な動きを止めて
ぼくを見上げたひとみ

幼い、ひとみ


─うん

─これは、なに?

─おはか。



 しんじゃったおはなの、おはか。






そのとき、くっ と
胸が詰まるようなおもいがして
また「おはか」を作り始めた子どもを

黙って、見ていた



ぼくが供えた、千切った、花を

さいごに埋めた



あの幼いひとみを
少しの色も変えずに




自由詩 花葬 Copyright なるせ 2006-06-06 18:33:59
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