花葬
なるせ
西日があかくにじむ頃
駅前、歩道のわきのほうに
湿ったまだ黒い土がいくつも盛られていて
ぼくはそれを
何かの墓だろう
と
かがみ込んで
手近なところに生えていた
名も知らぬ花を
ひとつ
千切り
供えた
立ち上がってふと目にしたのは
スコップ片手の、子ども
─これ、きみが埋めたの
左手の単調な動きを止めて
ぼくを見上げたひとみ
幼い、ひとみ
─うん
─これは、なに?
─おはか。
しんじゃったおはなの、おはか。
そのとき、くっ と
胸が詰まるようなおもいがして
また「おはか」を作り始めた子どもを
黙って、見ていた
ぼくが供えた、千切った、花を
さいごに埋めた
あの幼いひとみを
少しの色も変えずに