三重らせん
霜天

夜半
街灯の柔らかいスポットライトに冷たい風は吹いて
それでも少女は拒絶する
(何を、かは分からない)
優しい夜、ごとに
彷徨う足はなくせずに
寄り掛かりたい気持ちの始まりも
どこに根差しているのかを知らない


諦める言葉をノートに書き出せば
黒で埋まってしまいそうだったので
見なかったことにした景色を写真に残せば
アルバムはどれくらい必要だろう
いつから、とか
後付の理由の帰る場所を探しても
きっと両手では足りないから


窓際の、少しだけ静かな場所
ここにも誰かが息を伸ばしてくる
間違えそうな言葉を、慌てて飲み込んで少女は
右半分だけで笑ってみせる
世界がひっくり返りそうな場所を
すり抜けていく角度を知っていて
それでも少女は彷徨う足をなくせない
離れていきそうな青い空
ひとり、というのはどんな色だろう




いっそのこと
戦いが起こればいいのに、と
誰かの宣戦布告を
きっと皆も待っているんだ
とか
深いところで抱えている言葉を
なるべく触れないようにする癖、は
いつの間に皆、手にしてしまったのだろう

静かな爆弾が空から落ちてくる
痛がることなくばらばらに離れて、そうすれば
深い安堵のため息を、誰でも抱えているはずなのに




二重に、複雑に絡み合った誰かと誰かで
わたしというもの、が存在しているらしい
そこに絡んでいく癖、を
少女も、誰も気付いていけない
小さな水晶玉から覗いた世界は
いつも透き通って歪んでいる
手を伸ばせば誰かにぶつかる
ぶつかりたがっているのは
きっとお互い、だ


そうして、少女は拒絶して
拒絶しきれずに、明日に依存する
右半分だけでも笑っていければ
そんなに悪くもないだろう


小さい夜に
らせんする少女の
走り抜けて行く誰かに、また追いかけていく


自由詩 三重らせん Copyright 霜天 2006-06-04 17:43:24
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