とりすてす・あらんと
モーヌ。




にわか雨は 去り 桜草の 露の うすももいろに

ぼくは きょうを 生い 立って ゆく

( 撒き 散らされたんだ )

それは ブリリアントに かがやいて

偶成の 初夏... 色彩と 野と を 過ぎて ゆく

野いちごの アスファルトを 砕いた 花を ささやき

相棒の 残された ポルトレの かるい 音を 切って

カンバスに 一筆の 風人かぜびと が 走って

木魂たちの いろ きみどりと 青灰と を 駆けて ゆく





太陽への 野心

一輪の 完全な ばら

ぼくらは 太陽だけじゃ 足りなかった

みんな 壊れて しまった... 洪水の あとで

もう かたちを 失くして しまった

みんな 返して しまった

きみが とぎれて 見えなく なった

空が 雨の ふるさとじゃ ないのを 知っている けれど

雨が 過ぎ 透きとおった 空の なか

あなたの 手のひらの あじさいの道の なかで





点火 された 光景が あとずさり ながら めぐって ゆく

北航路を とおって 物理の距離 よりも 心理の距離 から

野に みどり を ひろげた きみの 眼の なかの 祈祷書を

暴波の あとに 遅れて くる 低音部の ない

かるい やさしい ひかりが 包んで ゆく

ひとつの 円還して ゆく じぶんじしんの 死を 泣きながら

啼いたり さえずったり する ものたちが 一閃して

からだを 駆け抜けて ゆく ように

季節の ひかりに 招かれて いつも きみは そこに いる よう だった

さらさらと まっすぐに つまさき 立って

ぼくの 知らなかった 消えたりは しない

つばさの 波の 対流の さきを

駆けめぐる ように 渡って 羽ばたいて いった













自由詩 とりすてす・あらんと Copyright モーヌ。 2006-05-30 22:16:15
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