流砂、風ではなく波に
たりぽん(大理 奔)

砂浜で小さな砂山が削られている
誰かの作った小さなでっぱりだ
波は届いたり
届かなかったり
白かったり黒かったりしながら
砂を暗い海に流そうとする
流れていく流れていく
泡のような名残に
とまどいながら
波は知っている
波は隠している
あえいであえいで
砂は浮いたり沈んだりしながら
風の音にまみれて
かもめがつついたりもする
砂浜で小さな削られているもの
小さくなり
細くなり
影を失い
昼も夜も素知らぬふりで
届いたり
届かなかったり
しながら
居ないことと
もう会えないことは
水平線のあっちとこっちほど
違うので
男達はめいっぱいの灯火を焚いて
砂の中にまみれた水晶を探しに
ちいさなでっぱりを探しに
暗い海で
砂の行方に舵を切る



自由詩 流砂、風ではなく波に Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-05-30 21:07:24
notebook Home 戻る