花畑
奥津 強

年老いた 女は 
抜け落ちた 髪を
握る
まるで
一本 一本が
年のようにもなり

年老いた 女は
梅雨の 暗雲の中

遠くの 橋を 見る

家族が 迎えに 来る
吊り橋の 遠くから

向こう側まで 行けば
老いた 女は 数珠を
捨て
花畑に 行けるのだ
およそ 戦争末期
多くの 女が 
花畑に 向かった

だが 女には
歩けるだけの 足がない

女が 見るのは
若き 頃の 残像
そして
花畑は
女を 拒む

だが 老女よ

いつかは 行く事に
なるのだ

友や 愛し合った者達と
再会する 時が 来る


自由詩 花畑 Copyright 奥津 強 2006-05-30 10:49:39
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