矢文、我に放て
たりぽん(大理 奔)

今日死んだ太陽の
お仕着せな光を反転させて
月が夜を奪う偽物の夜
太陽を復活させる呪文
水晶を微電流で虐めて
僕たちも一緒に
ふるえる

  言葉が聞きたかった
  なのに
  誰もが黙ったまま
  矢文を放つ偽物の夜

風は体の中に吹くことはなく雨も
涙腺とは関係なく止んでしまった
世界に影のように張り付く
置き去りにされる実体

  おう、と抜けば
  痛みと血を引き替えに
  君は手に入れる
  放たれた言葉

新月に雲は沈んで
今日は月も死んだ本当の夜
ほんの微かに自分を
燃やして光る君を抱く
消え入りそうな

水晶の温もり
刻まれる時間に
、ふるえる





自由詩 矢文、我に放て Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-05-29 23:21:29
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