銀花 Ⅲ
木立 悟
ふたしかな季節を
灰の午後のかけらを
染まるようで染まらずにとおりぬけ
雲を燃す火はぽつぽつと
河口の浪を照らし出す
割れた岸を砂は流れ
夜の虫の光のように
浪の下へと沈んでゆく
かけらをとらえようと身をかがめ
ゆらぐ葉の上の
蟷螂の手まねきのなかにもどろうとする
太陽のなかのもうひとつの太陽
白にも青にも許されぬ色の
またたきとまばたきのはざまに棲む
すべてになろうとするものの背に
有限のしるしのように
銀の花が咲いている
かなしみのしるしのように
水をはじき かがやいている
空を重ね
空を揺らす
見えない生きものの手首が
原を分ける道に立ち
雨と花を浴びつづける