銀花 Ⅲ
木立 悟





ふたしかな季節を
灰の午後のかけらを
染まるようで染まらずにとおりぬけ
雲を燃す火はぽつぽつと
河口の浪を照らし出す
割れた岸を砂は流れ
夜の虫の光のように
浪の下へと沈んでゆく



かけらをとらえようと身をかがめ
ゆらぐ葉の上の
蟷螂かまきりの手まねきのなかにもどろうとする
太陽のなかのもうひとつの太陽
白にも青にも許されぬ色の
またたきとまばたきのはざまに棲む



すべてになろうとするものの背に
有限のしるしのように
銀の花が咲いている
かなしみのしるしのように
水をはじき かがやいている
空を重ね
空を揺らす
見えない生きものの手首が
原を分ける道に立ち
雨と花を浴びつづける












自由詩 銀花 Ⅲ Copyright 木立 悟 2006-05-28 22:21:11
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