陽と雨
木立 悟




ななめに銀の 朝のはじまり
指が背になり 背が指になり
よろこびのあとのまどろみを
ひとつふたつと過ぎる鳥影


結ぶ光 結ぶ記憶
髪の毛を結わえる見えない手
風のなか
いつか解かれる日の笑みが
夕べの羽に生まれては消える


まばたきとまばたきの重なりに
見えかくれする子の瞳に映る
さらに重なるかがやきの群れ
碧の刃を添えたまなざし
日没のむこうへはばたいてゆく


傾きつづけるまだらと水紋
片寄る悲しさとよろこびは
どこまでもありつづけ
変わりつづける


日没のあとも河口には
砂を照らす白が残る
水辺の小さな家々を歩み
扉の隙間から入りこみ
臥したものの笑みを染める


容れ物もないまま
記憶は増してゆく
水と曇の渦は降り
高みだけがむらさきに晴れ
陽と雨は指をからませ
双つの渦を見おろしている










自由詩 陽と雨 Copyright 木立 悟 2006-05-24 13:51:49
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