放蕩息子の帰宅
モーヌ。




そこでは ぼく と あなた と だけ だった

ふたり... 手のひらの 傷穴 を 帰って いったのは





日がな 窓の眼の まま いっぱいに

高まり 止んでは ゆりかもめの リュートが

紗布の ひかりたちを 追い 抜いて

ガラスの 塔たち を ゆらせた

海を ひらいた 雲の杜を ひらいた

つばさの なかの 木の葉を ひらいた

午後の 陽の なかの あなたに まみれて

ぼくは 眼を 細めると

まだ 水の なかの 黒と 白の 無言劇が

閉じては ゆけない 変幻が

抱きあっていた 告白を

割れながら はじけて 歩いて いった

いつも そんな 場所で

いつも そんな 音を

ことばの 孤児へ と 託して ゆき

掬った 水の鳥を 空の 間に 間へ

あなたの ほうへ と 放して いった

はばたいてくる 調べは いつか

ささやいてくる 音色は どこか





そのあとを したい ながら

いつかの ゆりかもめが また ゆらゆら と

いくつもの 眼には 見えない 道しるべを 追いかけて

天の 頬 ピエロの 雫 を つと ひかった

路地の 夕ぐれの ほそい なわとびの 影を

しなって ゆくものを くぐった













自由詩 放蕩息子の帰宅 Copyright モーヌ。 2006-05-23 18:17:47
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