使者とは呼ばない、鳩よ
たりぽん(大理 奔)

紙屋町から橋を渡ると
折り鶴に祈りを捧げるための
順番待ちの列
それは確かに祈りのかたちだが
朝夕の公園掃除とは
似てもにつかない

ベンチに座り
おにぎりを取り出すと
えらそうに鳩がやってくる
こいつはなんと強そうなのだろう
エジプト料理のように
まんまるに太って

   それは猛禽におびえて
   ふるえる鳩に似ている違う鳥
   ああ、そんなふうに小さな歩幅で
   距離を測ってはいけない
   目に見えない空間を
   そうやって、存在させてしまうから
   幸せはどこにでもある
   不幸もどこにでもある
   どこにもないものを
   存在させてしまう

万全の構えで
集合写真を撮る団体の列
太った白人がドームを指さす
その横で僕は
誰も見上げない曇った空を振り仰ぎ
あの夏の日
猛禽はどの方角から来たのかと
目を細める



どこかの修学旅行が
お弁当を配り終えたようだ
子供のはしゃぐ声が聞こえ
見下ろすと
足下に群がる

鳩だけが
おいしそうで
かなしい




自由詩 使者とは呼ばない、鳩よ Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-05-22 00:39:09
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