海岸沿いを
水在らあらあ



おれは歩いていた

いつもどおりの海岸沿いを

おれは歩いていた

いつもどおり美しい海岸沿いを歩いているのにおれは

おれは海が見えなかったちっともおれには

おれには唇を風が

風が塩っ辛く撫ぜてゆくのが

不愉快だった

波が

潮風が

カモメが

そして隣にはおまえがいるはずだった

おまえが

歩いていてくれているはずだった海が

見えないのと同じようにおれには

おまえも

見えなかった

そうだちっとも見えないんだおまえがおれには

それが本当に悲しかった

いつもどおり美しい海岸沿いをおまえと一緒に歩いているはずなのに

どこなんだここは

どこにいるんだおまえは

いつもと変わらない

美しいこの街の海岸沿いを

おまえと一緒に

歩いているはずなのに

おれには何も見えない何も

何も見えないおれから

おれから

何も見えないおれから

潮風はおまえの匂いすら

匂いすら

奪いさり

おまえの声は

声は

カモメに

奪われ

おれにはよく分かっているのにおまえが

おまえがおれの隣をいつもどおり

いつもどおり美しいこの街の

この街の海岸沿いを美しい

おまえがおれの隣を

おれの隣を

海を

おれを

見ながら

歩いているはずなのに

おれには見えないんだ海が

見えないのと同じようにおまえが

見えないんだおまえが

見えないからおまえに

言うんだおれはおまえに



ついてくるな

おれに

ついてくるなだって

だって

見えないから

おれには

おまえが

見えないから海が

見えないのと同じようにおれには

おまえが

見えない













そして

おまえが

すこしずつ

おまえが

いなくなったあとが

すこしずつ

見えはじめるおまえの

不在が

すこしずつ

はっきり

見えはじめるすこしずつ

はっきり

みえはじめたおれの

おれのこころから

こころから





しはじめる





しはじめるその





波が

コーラス

しやがる

おれの

こころに

コーラスしやがる

おれの

こころが

泣きじゃくる

音に

波が

潮風が

カモメが

コーラスしやがる

波が

潮風が

カモメが

そして隣にいない

いない

もういない

おまえが

コーラスしやがる

おれの

もう

歩けない

もう歩かない

こころに

コーラス

しやがる









いない

いないいない

いないいないいない

いないいないいないいない

いないいないいないいないいない
いないいないいないいないいないいない
いないいないいないいないいないいないいない
いないいないいないいないいないいない
いないいないいないいないいない
いないいないいないいない
いないいないいない

いないいない

いない





















ばあ









自由詩 海岸沿いを Copyright 水在らあらあ 2006-05-21 01:46:08
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